Kurozome Process
京黒紋付が染め上がるまで
『京黒紋付染』は1979年に国の伝統的工芸品に指定され、京都府の伝統的工芸品等としても登録される京都ならではの着物文化の一つです。平安時代にその起源を持つと言われています。
明治以降、婚礼のときに着る黒留袖や、葬儀のときに着る喪服などの慣習が上流階級を中心に広まり、戦後、社会に定着しました。
現在の手法が確立されたのは戦後と言われますが、長年に渡り技術を積み重ね、時には革新を遂げ、磨き上げられた伝統の技術です。
1、白生地検品作業
染色前に白生地を入念に検査します。主なチェックポイントとして「織難」「スレ」「折れ」などです。
時間や気象条件などにより角度を変えてチェックします。
2、墨打作業
袖・身頃などの寸法を測り、振り分けをします。
この際、尺貫法に基づいて計測します。
3、紋糊置作業
紋の位置づけをして紋糊置(もんのりおき)をします。紋糊けはもち米100%で作られた防染糊で、片面が防水紙、片面が糊面で、その糊面を生地の両面に張り付けて十分乾燥させて染色に入ります。
4、ミシン掛け・染ワク掛け
美麗に染め上げるため、ミシンに掛ける反数で生地の面側にむだ布をつけます。
ミシン掛け終了後に染めワクの針に1本ずつ掛けます。
色むらやシワが出ることを防ぐ作業になります。
この場合、反物の縮み具合を計算した上で、よく考えながら針に掛けます。
5、地入れ
生地に付着している不純物を取り除き、染料の吸収率をよくします。
この場合、酵素を利用し、染色前に50℃~60℃ほどの温度で10分ほど地入れします
6、染色(黒染)
染色釜に染料を入れ、反物の目方、織組織によって温度・時間をコントロールしながら染色します。染色時間は物によって異なりますが、25分~30分程です。染色温度は90℃~95℃です。
7、水洗
着用中に色落ち・色移りが無いようにするため水洗いが大変重要な工程です。水洗時には色止め薬品を使いますが、水質と水洗時間が一番のポイントです。
当社ではこの水洗に柳の水を使用しています。柳の水には染物に必要な鉄分が適当に含まれていて黒染に最適です。
8、紋糊取り作業
充分に水洗した反物から紋糊を除去します。一度目に親指のつめを使って紋糊を落とし、二度目に織組織のかなに残っている糊を特殊な器で落として完全に除去します。
9、乾燥
反物を広げたまま1枚1枚脱水器に流し、一瞬にして水分を吸い取り、続けて乾燥させます。そのため生地を傷めずきれいに仕上がります。
10、仕上げ・湯のし
染め上がった反物の風合いと柔軟さを出します。防水加工などもここで施します。湯のしを行い、反物の小じわを充分に伸ばします。
11、紋洗い
紋部分を白くします。
12、紋上絵
紋場(紋糊置で防染した部分)に家紋を墨で描いていきます。たいへん細かな作業です。筆や竹コンパスなどの道具を用い、紋様を丁寧に描いてゆきます。